歯科医師が語る!RIZIN.20 那須川天心vs江幡塁【マウスピース問題】
2019年の大晦日に行われた、RIZIN.20の那須川天心vs江幡塁の一戦での出来事がネットで話題になっています。
事件が起きたのは1R残り1:30となったところで、那須川天心選手の蹴りが江幡選手の顔面をとらえた。その瞬間、江幡選手の口からマウスピース(マウスガード)がはずれ、リングへと飛び出てきた。
その後、江幡選手はマウスピースがはずれた事に気づき、那須川天心にストップをかけるようなジェスチャーをしたが、レフリーからストップの合図はかからず、試合は続行となり、その直後にもらったパンチからのラッシュで1回目のダウンとなってしまいました。
ネットでは、レフリーに対してなぜ止めなかったのか?ルール上はどうなっているのか?といった声があがっていました。
歯科医師としての見解
スポーツ歯科医学会に所属し、現役のプロ格闘家のサポートを行っている立場から今回の【マウスピース問題】について書いてみたいと思います。
止めるべきか?続けるべきか?
今回、ネットでも議論になっている、止めるべきか?続けるべきか?という部分に関しては、【止めるべき】だと思います。
マウスピース(マウスガード)がない状態での殴り合いはかなりの危険が伴います。安全を確保する為にマウスピース(マウスガード)の着用が義務化されています。
そのマウスピース(マウスガード)が試合中にはずれてしまった場合は選手たちの安全を確保する意味で【止めるべき】であったと思います。もし、マウスピース(マウスガード)がない状態で前歯にパンチをもらえば前歯が抜けてしまったり、折れてしまいます。そうなれば試合の続行自体が不可能になる可能性もあったと思います。
プロの選手たちの打撃の威力はそれくらい強烈です。前回のRIZINで朝倉選手がマウスピースをしていたにも関わらず、前歯が折れていました。(これはマウスピースにも問題があった可能性がありますが、、、)
しかし、毎回毎回、マウスピース(マウスガード)がはずれるたびに試合を止めていたら試合の面白さが失われてしまいます。
おそらく今回のレフリーの判断としては、試合の流れを優先して、流れが切れたところで再装着をさせようと思ったのではないでしょうか?
マウスピース(マウスガード)に問題はなかったのか?
今回の問題は、きちんとしたマウスピース(マウスガード)を使用していれば起こらなかったと思います。
つまり、江幡選手が使っていたマウスピース(マウスガード)に問題があったと考えています。
マウスピースにはいくつかの種類があります。
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江幡選手が実際にどのマウスピース(マウスガード)を使っていたかはわかりませんが、あのはずれ方を見ると、市販されている【ボイル&バイトタイプ】または【知識のない歯医者が作ったカスタムメイドタイプ】だと思います。
【ボイル&バイトタイプ】も色々な種類が販売されていますが、あくまで既製品で適合がよくありません。喋りにくい、吐きそうになる、ずっと咬んでいないと落ちてくるといった話を多く聞きます。値段的に安いので学生やアマチュアの選手が使っている事が多いです。
【知識のない歯科医師が作ったカスタムメイドタイプ】を使っていた場合、
歯医者で作るマウスピース(マウスガード)= いいマウスピース(マウスガード)
という勘違いの代表例です。歯医者で作れば確かに歯の型を取ってから作るのでカスタムメイドのマウスピース(マウスガード)であることは間違いありません。しかし、いくら型取りをしても、作り方を間違うとカスタムメイドと呼ぶにはほど遠い物にしかなりません。
実際に、多くのプロ格闘技の選手をサポートしていると、こんなマウスピース(マウスガード)あり!?って思うことが多くあります。それでいて値段はかなり高額な値段で作製されています。
マウスガード製作所で作製したマウスガード使用している選手ならわかると思いますが、知識のある歯科医師が作ればそんな簡単に試合中にマウスガードがはずれたりしません。
歯医者であればどこでもいいというわけではなく、日本スポーツ歯科医学会という学会に所属していてきちんと資格を持った歯科医師や技工士がいる歯科医院で作ってもらうことをお勧めします。
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【マウスピース問題】の今後
今後も【マウスピース問題】は色々な場面で議論されると思います。
マウスピースがはずれたら試合を止めるというルールを作ってしまえば、自分が不利になった場面で意図的にマウスピースを吐き出す選手も出てくれかもしれません。しかし、止めなければ安全面での問題がでてしまう。ではどうすればいいのか?
歯科医師としての考えは、選手が使用するマウスピース(マウスガード)にきちんとした基準を設けるべきだと思います。
はずれやすいマウスピースの使用の禁止、カスタムメイドマウスガード以外の使用の禁止、試合中にマウスガードがはずれてしまった場合は選手は減点などのルール作りをしていけば自然ときちんとしたマウスガードを使用するようになり、まず、試合中にはずれる事がなくなると思います。
テレビに出る以上、選手達には教育的な視点からもきちんとしたマウスピース(マウスガード)を使用することで、それを見ている子供達にもきちんとしたマウスピースを使わなければいけないという意思を持たせることができると思います。
まとめ
今回の【マウスピース事件】は、最終的には江幡選手の自己責任だと思います。確かに、マウスピース(マウスガード)がはずれた後に、タイムをかけるようなジェスチャーはしています。しかし、もともとマウスピース(マウスガード)がはずれなければそのような必要もなったはずです。自分が試合で使う道具に対して責任を持って選択をする事が今後必要になってくるのではないでしょうか?
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